アメリカがよく分からない ― 『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』 冷泉彰彦 著

やっぱりアメリカという国はなんだか、よく分からない。
あんな先進国で国民皆保険がどうして実現しないのか分からない。
どうして銃の規制がそんなに難しいのか分からない。
なんで、あんな「小粋なアメリカンジョーク」で
爆笑が起こるのかが分からない。


で、そう言うことを考えるときに、ちょっと参考になった本が

民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』 冷泉彰彦 著

著者は最近は、ニューズウイーク日本版のコラムで有名ですな。YAHOOニュースにもリンクされているし。

前回大統領選の前、
つまり、「オバマが黒人は黒人初の大統領になれるかどうか?」に関心が集まっていた頃の本なので、
時事的にはもう古いのだが、
そういう部分はともかく、民主党と共和党の違いを
歴史的な背景までさかのぼって解説しているのが、面白い。 今読んでも極めて価値がある。

アメリカの政治状況。
とりあえず、「民主党=リベラル」「共和党=保守」というくらいのことは、なんとなく知っていても、
たとえば、奴隷解放したリンカーンは共和党の大統領だし、
ベトナム戦争をはじめたのは民主党、終わらせたのは共和党・・・となるとなんだか混乱してしまう。


で、またアメリカの選挙というと、
なぜか「同性婚の是非」「銃規制の是非」「中絶の是非」が、やたらと争点になる。

日本で菅総理と谷垣総裁が、こういう争点を持ち出して選挙戦を戦うことは、ちょっと考えられないわけで、
こういうとき、ついつい日本人はアメリカのほうを「グローバル・スタンダード(苦笑)」と考えてしまいがちだが、
そんなことはないらしく、少なくとも、あそこまで「必ず争点になる」国は珍しいらしい。

で、なんで、そうなるのかというと、
著者によれば、これってつまり「どういう信仰をもっているか」を調べるための踏み絵らしい。
一応、「政教分離」が建前のアメリカでは、候補者の信仰そのものの是非を問うわけには行いかないけど
こういう質問の答えを見れば、その候補者が、たとえば「キリスト教保守派かどうか」が分かったりするわけですね。

で、やはりアメリカという国は、この辺の問題を避けては通れないらしい。

そもそも、信仰の違いからイギリス政府に迫害され逃げてきた人達が作った国で、作った国なので、
「できるだけ政府というのは何もしないほうが良く、
個人の自由と自分たちを自分たちで守る権利は、
なによりも尊重されなければいけない!」というのが一つの伝統。

簡単に言えば、それが「貧しい人がいたからって、政府が手を差し伸べるべきではない」という「自由主義」につながるわけですな。

・・・とまあ、そんな話やら、現在の民主党と共和党の思想の系譜やら、
ハリウッド映画やドラマを「民主党的」と「共和党的」なのに分類してみたり
(ちなみに「セックス・アンド・ザ・シティ」は民主党、「デスパレートな妻たち」は共和党、スピルバーグ民主党、マックイーンは共和党)
新書にしては読み応えある本です。
かといって「難しすぎる」ようなことはなく。

ひとつ、なるほど、と思ったのは
民主党のリベラルの背後には
民主党のリベラルな政策は、全世界に広げていくべき」という「正義感」があるので、そのための戦争辞さない、という話。

なるほどねえ。
逆に、共和党のほうが「孤立主義的」なので、そういう形の戦争は、あまりやらない。
資源をとりにいく、とか、攻めてこられたので報復する(9・11も、そうといえばそうだ)ことはあるけれど。

いずれにしろ、民主党=リベラル、共和党=保守、などと単純に考えていると、物事の本質を見誤る。
その辺、アメリカの歴史にそって、両党の思想の系譜を開設している部分も「なるほど!」となる一冊です。

なお、アメリカの「へん」なところを、ライトに読むには、
町山智弘の一連の著作(『アメリカ人の半分はニューヨークの位置を知らない』『USAカニバケツ』『アメリカは今日もステロイドを打つ』『キャプテンアメリカはなぜ死んだか 』など)が、面白いっす。
ごくごく、お気楽によめるし。
   


この人の本職は映画評論なのだが、これも、個人的には嫌いではない。、
ま、「評論」というより、映画を読み解くため「解説」ではないのか?という気もしなくもないすが、でも、ただ「映画って、いいもんですね」というだけだったり、気に入った映画をCMでただ「見なさい!」って叫ぶだけだったり、ただ「感想」をいうだけの人と違って、「ちゃんと仕事しているなあ」という感じがします。

なんだか、まとまりのつかない日記になってしまったな。。。