はてなブログに移行してきました

今後ともよろしく。 タイトルも少し改め、書評以外のジャンルも書いていこうと思います。

普通の物差しでは測れない男について ―― 『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』青木理著

出色のノンフィクションである。「選挙は第4次産業」。 徳之島を中心に、奄美群島地区では昔から言われていたことらしく、実際、このブログの中の人も、20年くらい前に、同地出身の人に「実際まあ、そういわれてるよね」という話を聞いたことがある。 まあ、…

モノを作らない“ものづくり企業”について ―― 『アップル帝国の正体』 後藤直義・森川潤 著

ドコモがついにiPhoneを扱い始め、なんか新しい機種もではじめて、世間はいろいろ賑やからしいです。 “らしいです”というのは、このブログの中の人が、数ヶ月前にやっとガラケーをandroidスマホに変えたばかりで、とくにアップルの製品に興味のないボンクラ…

痛快娯楽劇と経済小説の間――ドラマ『半沢直樹』と原作について

ほぼ3ヶ月ほどブログを休んだわけだが、まあ、ゆるゆると復活していこうと思うので、よろしくお願いいたしたく。先日、とあることを検索しようとして「は」と入力したら、それだけでgoogle先生が検索候補として「半沢直樹」という単語を挙げてきた。 まあ、…

渡邉美樹氏のサクセスストーリーに注目が集まり始めた頃 ―― 高杉良著『青年社長』について

このところ、一部週刊誌とネット界隈で、やたらとこの本の主人公のお名前を拝見するような気がするので、さっと読み返してみようかと思ったわけである。 主人公の名は 渡邉美樹。青年社長〈上〉 (角川文庫)作者: 高杉良出版社/メーカー: 角川書店発売日: 200…

大英帝国とグローバル企業と“抜け穴”について ― 『タックス・ヘイブン ― 逃げていく税金』志賀櫻著

なんだか、三題噺のようなタイトルになってしまったが、今回のお題はこの本。 どちらかというと、全体を紹介するというより、最近ちょっと個人的に気になったトピックを中心にまとめていこうと思う。タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)作者: 志…

 作品の背後にあるものを感じてみる ― 伊藤計劃著『虐殺器官』について

その手の話に興味関心のある方からは今頃何をいっているのか? といわれるかもしれないが、最近読んだ伊藤計劃の『虐殺器官』が面白かった。虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)作者: 伊藤計劃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版購入: 5…

“帝国主義”の時代? ――『企業が「帝国化」する』松井博著

もうとにかく、国家というものを誰もがどんどん信用しなくなっていて、まあ、日本では民主党から政権がかわって「安倍自民党ならなんとかしてくれるんじゃないか?」という期待でとりあえず株価もあがって、多少明るい兆しが見えてきてはいるけれど、でも、…

人は二つのシステムを持っている ――  『ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?』ダニエル・カールマン著

まあ、なんというか「アダム・スミスの『国富論』やフロイトの『夢判断』に匹敵する新世紀の古典」みたいな書評がでていたりすると、やっぱり読む前に構えてしまうわけだ。 しかも上下巻あわせて700ページ以上だし。でも「著書はじめての一般書」ということ…

写真は真実を写すのか ―― 『キャパの十字架』 沢木耕太郎著

「戦場カメラマン」というと今の日本では、ちょっと前までテレビによく出ていた“あの人”を思い浮かべてしまうのかもしれないけれど、世界で史上もっとも有名な戦場カメラマン、といえば、今年生誕100年を迎えた「ロバート・キャパ」ということになるのだろう…

“万歳”にみる“伝統”の虚構性と変容について ― 『ミカドの肖像』(猪瀬直樹著)をてがかりに

万歳三唱という習慣があって、たとえば現代では政治家の人なんかがお好きで、衆議院の解散が宣言されたときとか、当選したときなんかによくやっている。ニュースなんかを見ていると、たとえば韓国なんかでも「万歳(マンセー)」を叫んでたりするわけで、な…

経済学ってやっぱりまだ発展途上なんだと思う ― 『デフレーション―“日本の慢性病”の全貌を解明する』 吉川洋 著

それにしても、やっぱり、この2ヶ月ほどの日経平均の上昇が「アベノミクスによる日本経済復活の序章」なのか、それとも「なんとなく安倍さんのお陰で景気もよくなりそう」という期待値に基づいた「ミニバブル」なのかどうか、というのは、よく分らない。 メ…

アベノミクスで給料はあがるのか ― 『日本人はなぜ貧乏になったか?』村上尚己著

日経のサイトによれば、先週金曜日の日経平均株価の終値は1万1,153円16銭、NY外為市場の円ドル相場は1ドル=92円65〜75銭で取引を終えたのだそうな。 さらに調べてみると、昨年12月14日、すなわち、例の総選挙直前の数値をみると、日経平均終値が9,737円5…

プロフェッショナリズムということ ― 『たくらむ技術』 加地倫三著

この本の著者名をみて、ピンとこられた人は、それなりに地上波テレビのバラエティ番組をご覧になっている人だろう。その、あのテレ朝の加持プロデューサーである。 年末の『アメトーーク! 5時間スペシャル』 をごらんになっていれば、この人が最終盤で江頭2…

「経営」と「経営学」の間 ― 『世界の経営学者はいま何を考えているのか』入山章栄著

気がつくと、だいぶ更新がとどこってしまって、当ブログをご愛読いただいている方には、まことに持って申し訳ない。・・・って、そんな人がいるのかどうか分らないが。間があいた分を取り戻す・・・というわけでもないが、前置きはさておいて、本の紹介に入…

仕組みで勝つということ ―『 監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略』 藤井純一著

実は先々週にこの本についてブログを書こうとして、書き終わり寸前に内容を誤って飛ばしてしまい、そのうえ先週は体調を崩してしまい、もしかしたら、よくよくこの本と縁がないのかもしれないが、3度目の正直を目指して書いてみることにする。その本はこちら…

社会科学を現実(?)に適用するということ ―『ゾンビ襲来』 ダニエル・ドレズナー著

ホラー映画をもっともっと見る習慣があったら、面白かったんだろうなあ、この本。ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える作者: ダニエルドレズナー,谷口功一,山田高敬出版社/メーカー: 白水社発売日: 2012/10/24メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: …

「すごい人たち」をうまく使う方法 ― 『戦略人事のビジョン』 八木洋介・金井壽宏著

ゼネラル・エレクトリック(GE)というのは、考えてみると、凄い会社名だ。 日本語に訳せば「総合電機」だろうか? 大分印象が違いますね。消費財としての商品がないということもあってか、GEというブランド名は日本ではいまひとつなところもあり、日本で保…

語ること、語れないこと、分かること、分からないこと ― 『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』 野矢茂樹 著

内容の理解がおぼつかない本について、ここに書くというのは禁じ手というか無謀な話なのだけれど、でも、やってしまう。 そんな気にさせられた本だったわけですよ、はい。ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む (ちくま学芸文庫)作者: 野矢茂樹出版社/…

明るい未来か? 大変な世の中か? ― 『ワーク・シフト』リンダ・グラットン著

何の自慢にもならない話なのだが、このブログの中の人は、複数回の転職を繰り返している。 これは、なんだかんだいって終身雇用が「普通」ないしは「理想」と考えられがちな今の日本の社会にあっては珍しいことのようで、ごくまれに、なんだか「凄いこと」の…

「政治的に正しい」ことをいっても解決策にはならないということ − 『私家版・ユダヤ文化論』内田樹 著

この週末に、今回取り上げる本の著者、内田樹氏の講演会を聞く機会を得た。 主な内容は、メディア論だったのだが、その最後、あらかじめ聴講者から集められた質問に内田氏が答えるところで、ちょっと面白い質問があった。 曰く、「内田さんの本は、どうして…

末端から攻めあがるということ ― 『リバース・イノベーション』  ビジャイ・ゴビンダラジャン クリス・トリンブル著

『イノベーションのジレンマ』『ブルー・オーシャン戦略』を超える衝撃の戦略コンセプト!・・・とまあ、なかなかに勇ましい帯とともに、新刊ビジネス書のコーナーに最近平積みになっているのが、今回のお題である、この本である。リバース・イノベーション…

真面目にやれよ(笑)―『イグ・ノーベル賞』マーク・エイブラハムズ著

これ、ほしいと思った人も多いだろう。 日本のおしゃべり妨害器に「イグ・ノーベル賞」 YOMIURI ONLINE 【ケンブリッジ(米マサチューセッツ州)=中島達雄】人々を笑わせ、考えさせる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の今年の授賞式が20日、米ハーバー…

最後は逃げるが勝ち? ―『中国人のビジネス・ルール 兵法三十六計』梁増美 著 

なんだか尖閣諸島の領有権をめぐって、中国での暴動が大変なことになっているらしい。ま、この100年くらい(いや、有史以来3000年近く?)あの国は大変なことが続いているんじゃないかという話もあるし、あの程度の暴動は、政府の意向が変われば、しれっと「…

語らないものが語ること ― 『無言館ノオト』窪島誠一郎著

そんなわけで先週は夏休みということで、このブログもお休みさせていただきました。・・・というのは、こちら側の勝手な事情なわけだが。で、休み中、長野県某所の温泉にいったりしたわけだが、その途中でたちよった、とある絵画館にかかわる本が今回のテー…

表面的な議論に流されないために ― 『名著で読み解く 日本人はどのように仕事をしてきたか』 海老原嗣生・荻野伸介著

終身雇用が崩れて、日本人の働き方が変わってきたとか、大学生の就職が大変だとか、派遣やアルバイトなど、若者が非正規労働を強いられて苦労しているとか、不景気が続き、労働者に長時間労働が強いられる中でワークライフバランスをどう確保していくか、と…

「究極の他者」と関わるために ―『日本仏教の可能性 ― 現代思想としての冒険 ―』末木文美士著

前回、新渡戸稲造の『武士道』を批判的にとらえた本を取り上げたわけだけれど、『武士道』という本の冒頭には、こんなことが書かれている。 約十年前、私はベルギーの法学大家故ド・ラブレー氏の歓待を受けその許(もと)で数日を過ごしたが、或る日の散歩の…

本当の「伝統」について考える ― 『武士道の逆襲』菅野覚明著

がんばれニッポン! というわけでオリンピックが開幕したものの、どうやら「ニッポンのお家芸」である柔道のメダルの数が伸び悩み、もやもやした気分の方も多いのではないかと思う。まあ、さすがに柔道でメダルが取れなかったからといって「今どきの選手は大…

有利な条件を引き出すための「リアル」について ― 『武器としての交渉思考』瀧本哲史著

以前、このブログで勝間和代女史の新刊(『「有名人になる」ということ』)をとりあげたが、そのなかで、「2011年に出版した著書が、思ったほど売れなかった」というエピソードが出てくる。 勝間女史の自己分析によれば、「わたしと同じように、何らかの概念…

ネットという「公共圏」に膨大な情報が流れる時代について、取りとめもなく考えてみた ― 『パブリック』 ジェフ・ジャービス著

これが、どの程度、一般的に知られている話題なのかはよく分からない。 ヘビーなネットユーザーの方ならば、先刻ご承知の話題だろうし、そうでない方の中には「えっ! そんなことになっているの?」と驚く方も、いるかもしれない。 このブログを読みに来てく…