読書 思想

語ること、語れないこと、分かること、分からないこと ― 『ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む』 野矢茂樹 著

内容の理解がおぼつかない本について、ここに書くというのは禁じ手というか無謀な話なのだけれど、でも、やってしまう。 そんな気にさせられた本だったわけですよ、はい。ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む (ちくま学芸文庫)作者: 野矢茂樹出版社/…

「政治的に正しい」ことをいっても解決策にはならないということ − 『私家版・ユダヤ文化論』内田樹 著

この週末に、今回取り上げる本の著者、内田樹氏の講演会を聞く機会を得た。 主な内容は、メディア論だったのだが、その最後、あらかじめ聴講者から集められた質問に内田氏が答えるところで、ちょっと面白い質問があった。 曰く、「内田さんの本は、どうして…

「究極の他者」と関わるために ―『日本仏教の可能性 ― 現代思想としての冒険 ―』末木文美士著

前回、新渡戸稲造の『武士道』を批判的にとらえた本を取り上げたわけだけれど、『武士道』という本の冒頭には、こんなことが書かれている。 約十年前、私はベルギーの法学大家故ド・ラブレー氏の歓待を受けその許(もと)で数日を過ごしたが、或る日の散歩の…

本当の「伝統」について考える ― 『武士道の逆襲』菅野覚明著

がんばれニッポン! というわけでオリンピックが開幕したものの、どうやら「ニッポンのお家芸」である柔道のメダルの数が伸び悩み、もやもやした気分の方も多いのではないかと思う。まあ、さすがに柔道でメダルが取れなかったからといって「今どきの選手は大…

先端を生きた男のみた日本社会について考えてみる ― 『漱石文明論集』夏目漱石著

最近流れているJCBカードのCMで、嵐の二宮和也くん(映画『硫黄島からの手紙』をみるまで「カズヤ」だと思ってました。「カズナリ」ですね)が、タクシーの中でカエルから「皮相上滑りの開化である」と言われるという、いささかよくわからない設定のものがあ…

本物の「金儲けの専門家」が持つ知性−『日本人はなぜ株で損するのか?』藤原敬之著

正直、題名の付け方が、いまひとつ。 それが、この本を読んだとき、最初に浮かんだ感想である。このタイトルは、なんだか「株で簡単に儲ける方法」をアドバイスすると称した駄本と区別がつかないが、内容はもう一段も二段も深い。 一流の人というのは、やは…

実はあんまり自己啓発の本ってすきじゃないんだよな ― 『ポジティブ病の国、アメリカ』 バーバラ・エーレンライク 著 

ポジティブ病の国、アメリカ作者: バーバラ・エーレンライク,中島由華出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/04/10メディア: ハードカバー購入: 2人 クリック: 40回この商品を含むブログ (12件) を見るビジネス書の世界には「成功法則」だの「自己実現…