2011-01-01から1年間の記事一覧

歴史や道徳を教え込んだって、「かつての素晴らしい日本」は取り戻せないんじゃね?−『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』 山岸俊男著

ブックオフをうろついていたら、帯の『「武士道」「品格」が日本をダメにする!』という文言が目に留まって購入した一冊。 けっこう「あたり」でした。こういうのは、うれしいですね。日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点…

本物の「金儲けの専門家」が持つ知性−『日本人はなぜ株で損するのか?』藤原敬之著

正直、題名の付け方が、いまひとつ。 それが、この本を読んだとき、最初に浮かんだ感想である。このタイトルは、なんだか「株で簡単に儲ける方法」をアドバイスすると称した駄本と区別がつかないが、内容はもう一段も二段も深い。 一流の人というのは、やは…

安易に「日本語は特殊」とか言いたくないけど−『プルーストとイカ』メアリアン・ウルフ著

日本人は特殊だとか、日本語は特別だとか、そういうことは安易に言わないほうが良い、と個人的には思っている。 だけれど、この本を読むと、やはり、日本語、そして日本語で育った人間というのは、それなりの特性を持っているのだろうなあ、と思わざるを得な…

「屁をこいた坊さん」が僕に思い出させてくれたこと − 『全国アホ・バカ分布考』 松本修著

ことの発端は、なにげなくつけていたテレビで流れていた、関西ローカルのバラエティ番組だったのである。吉本の芸人がわらわらと集ってダラダラとやっているその番組で、「へべれけによっている人に限って、なぜ『全然酔うてないで!』というのか」、という…

人が堕落するスピードは、かなり早い ― 『ユートピアの崩壊 ナウル共和国』 リュック・フォリエ著

多分、海外を紹介するバラエティやドキュメンタリーの類で見たことがある人もいるんじゃないだろうか? ナウル共和国の歴史と今、についてのレポートが、今回取り上げる本である。ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで作者…

結局、人と人が向き合うということだから ― 『「質問力」の教科書』 御厨貴 著

御厨貴(みくりや たかし)。ちゃんと一発変換できるんですね。日曜の朝、TBS系列で放送されている『時事放談』という政治討論番組がある。 一部では「ジジイ放談」と揶揄されたりもしているこの番組、なにしろ関西圏では日曜の朝5時半(関東圏では朝6時)…

 計画をたてればいいってもんじゃないよ、という話 − ミンツバーグの経営論

20時ちょうどに「橋下氏、大阪市長に当確」のニュースが流れた日曜の夜。 ちょっとだけ、本題と関係ない話を。この選挙結果の意味を話しだすと、そりゃもう、山ほど論点はありそうだが、個人的には選挙戦終盤で、石原慎太郎が応援にしゃしゃりでてきて、「俺…

ドーナツの真ん中にあるものはなんでしょう? − 『H.ミンツバーグ経営論』

そんなわけで、以前、『ミンツバーグ教授のマネジャーの学校』についてのエントリーで書いたことを、実行に移してみようと思ったのである。つまり、カナダが産んだ世界的な(でも、日本では一般レベルでの知名度がいま一つの)経営学者、ミンツバーグ“につい…

ある「元美青年」の人生について ― 『渡邊恒夫 メディアと権力』 魚住昭 著

多分、本当に野球の好きな人、中でもドラゴンズファンおよびホークスファンの皆さんの中には、人事を巡る内紛でスポーツ新聞の紙面をジャックした読売巨人軍に対して、怒り心頭の方もおられるのではないかと思う。 いや、心中はお察しするけれど、個人的には…

「市場経済」の故郷はどこだ −『江戸商人の経営』 鈴木浩三 著

このブログの中の人は、今は京都に在住・在勤なわけだが、前職で働いていた一時期、大阪の堂島から中之島を見下ろすあたりの事務所に出勤していたことがあった。堂島というのは、江戸時代には「堂島米会所」があったところで、全国から船に載せられて集めら…

電子書籍について考えていたら、中島敦を思い出した

このところ、電子書籍についての話題に関心をもって、色々とネットで記事を読んだりしている。その昔、仕事で写真を撮ったあと、時間に間に合わせるためにフィルムをバイク便に載せて現像に出したことなど「おじさんの昔話」になり、レコードやカセットテー…

消費者に媚びるのは「社会的責任」じゃないんだよね ― 『それでも企業不祥事が起こる理由』國廣正 著

過日、このブログに書いた『修羅場の経営責任』の著者、国廣正氏が“本業”について書いた本を、たまたま手にしたので、メモ的に書いておくことにする。 まあ、実務よりの本なので、興味のない方には全く関係のない本なのかもしれないが。それでも企業不祥事が…

ベストセラーとは「現象」である ― 今更ながら『もしドラ』に関するもろもろについて思うこと

岩崎夏海という人が書いた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)という本が、ビジネス書としては異例のベストセラーとなり、版元のダイヤモンド社として創立以来初めて200万部を突破したこと…

互いに学ぶことこそ、もっとも有効な戦略である ―『ミンツバーグ教授のマネジャーの学校』 フィル・レニール、重光直之著

ミンツバーグ教授の マネジャーの学校作者: フィル・レニール,重光直之出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2011/09/16メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る いきなり以前の話をぶり返すようで恐…

「決断」するための方法論とその限界について −『武器としての決断思考』 瀧本哲史 著

武器としての決断思考 (星海社新書)作者: 瀧本哲史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/09/22メディア: 新書購入: 18人 クリック: 365回この商品を含むブログ (133件) を見る※同日23:30分に一部修正済み。久しぶりに、「ビジネス本然」としたビジネス本、…

「儲ける」方法を追う知の格闘 ― 『経営戦略の巨人たち』 ウォルター・キーチェル三世 著

経営戦略の巨人たち―企業経営を革新した知の攻防作者: ウォルター・キーチェル三世,藤井清美出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2010/12/21メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 325回この商品を含むブログ (8件) を見る久しぶりにガッツリした本を…

人が笑う理由は説明できるのか? ― 『らくごDE枝雀』 桂枝雀 著

らくごDE枝雀 (ちくま文庫)作者: 桂枝雀出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1993/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 25回この商品を含むブログ (13件) を見るなんで突然こんな本なんだよ、という話だが、たまには、まったくのマニアックな趣味の世界に走っ…

あの涙の向こうにあったもの ― 『修羅場の経営責任』 国広正 著

修羅場の経営責任―今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実 (文春新書)作者: 国広正出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログを見る「私らがみんな悪いんです! 社員は悪くありません! どう…

神話解体の序曲 ― 『日本海軍 400時間の証言』 NHKスペシャル取材班

日本海軍400時間の証言―軍令部・参謀たちが語った敗戦作者: NHKスペシャル取材班出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/07メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 45回この商品を含むブログ (19件) を見るむかし陸軍いま財務省、とか、むかし陸軍いま霞ヶ関、と…

飲食店は科学である ― 『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』 正垣正彦 著

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ作者: 正垣泰彦,日経レストラン出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2011/07/25メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 89回この商品を含むブログ (10件) を見るイタリアン食べに行こうか? と人をさ…

デブになるのは誰のせい? ―『アメリカ人はなぜ肥るのか』 猪瀬聖 著

アメリカ人はなぜ肥るのか (日経プレミアシリーズ)作者: 猪瀬聖出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2010/11/10メディア: 新書購入: 3人 クリック: 17回この商品を含むブログ (12件) を見るカービーダンスというのが流行っているらしい。 いわゆる…

尊敬に値する総理大臣がいた時代が、この国にもあったらしい ― 『危機の宰相』 沢木耕太郎 著

危機の宰相 (文春文庫)作者: 沢木耕太郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/11/07メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 32回この商品を含むブログ (26件) を見る「佐藤、池田総理、嘘だけ言うとさ」という(一部で)有名なフレーズがある。 これだけ見ると…

自分で選びたい人たち ― 『アメリカ 選択肢なき選択』 安井明彦 著

アメリカ 選択肢なき選択 (日経プレミアシリーズ)作者: 安井明彦出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2011/07/09メディア: 新書 クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る「財政再建に向けた選択を先延ばしがちなのは、政治的な理由が大き…

実はあんまり自己啓発の本ってすきじゃないんだよな ― 『ポジティブ病の国、アメリカ』 バーバラ・エーレンライク 著 

ポジティブ病の国、アメリカ作者: バーバラ・エーレンライク,中島由華出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/04/10メディア: ハードカバー購入: 2人 クリック: 40回この商品を含むブログ (12件) を見るビジネス書の世界には「成功法則」だの「自己実現…

それ、いくらですか? ―『スマート・プライシング 利益を生み出す新価格戦略』 ジャグモハン・ラジュー、Z・ジョン・チャン 著

スマート・プライシング 利益を生み出す新価格戦略作者: ジャグモハン・ラジュー,Z・ジョン・チャン,藤井清美出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2011/07/07メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 48回この商品を含むブログ (2件) を見るゲーム機の類に…

障害者雇用の、一つのカタチ ― 『利他のすすめ』 大山泰弘 著

利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵作者: 大山泰弘出版社/メーカー: WAVE出版発売日: 2011/04/22メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブログ (1件) を見る日本理化学工業、と聞いてどんな会社かすぐ分かる人はあまり…

血液型? それウソだからさあ ― 『心理テストはウソでした』 村上宣寛 著

心理テストはウソでした (講談社+α文庫)作者: 村上宣寛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/07/17メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 24回この商品を含むブログ (5件) を見る何しろテレビでも雑誌でも、血液型占いというのはよく見かけるくらいだから、信じ…

役人の数は適切か? ― 『パーキンソンの法則』 C.N. パーキンソン 著

パーキンソンの法則 (至誠堂選書)作者: C.N.パーキンソン,森永晴彦出版社/メーカー: 至誠堂発売日: 1996/11メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 43回この商品を含むブログ (28件) を見る統計局のホームページによれば、日本の国家公務員の数は29万2405人だ…

第一人者の本 ― 『失敗学のすすめ』 畑村洋太郎 著

失敗学のすすめ (講談社文庫)作者: 畑村洋太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/04/15メディア: 文庫購入: 30人 クリック: 182回この商品を含むブログ (169件) を見る学者でもコンサルタントでも評論家でも、専門家として「第一人者」になるための早道は…

結局、書かなきゃ文章なんて上手くなれない ― 『知的文章とプレゼンテーション』  黒木登志夫 著

知的文章とプレゼンテーション―日本語の場合、英語の場合 (中公新書)作者: 黒木登志夫出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/04メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 11回この商品を含むブログ (12件) を見るああ、心に隙があると、ついついまたこうい…